純愛
その1
お食事会終わりました。
PM6:33
集合場所に到着。仕事が長引いて、3分遅刻してしまった。駅の階段を必死に下り、改札までダッシュ!
改札から少し離れた所に、背中を丸めて小さくたたずんでいる彼女の姿が見える。俺は、改札をくぐり抜け猛ダッシュで彼女に近づいた。「Kさん、ごめん。結構待った?」
「ううん。だいじょうぶですよ。少しその辺うろちょろしてたので。」彼女の優しくてゆったりとした口調に、俺はほっと胸をなで下ろした。上は緑色の洋服で、スカートは茶色。地味な所は相変わらずだけど、いつもと違う。何かが違う。そして、俺たちは少しずつ歩き始めた。
「これからどうしようか?ボーリングでも行く?」 以前、ボーリングは好きだと言っていた彼女の言葉を信じて、俺は今にも震え出しそうなか弱い声で言った。
「ボーリングやる力が残ってないから。」 彼女は私の予想とは裏腹に、うなだれるように答えた。きっと、今日は疲れているのだろう。無理して連れて行っても、きっと盛り上がらない・・・
俺は、がっかりした。まだ6:30だし、腹は減ってない。しかし、ここでうなだれるわけにはいかない。いきなり、食事モード全開の言葉を投げかけた。「よし、じゃあタージマハールというインドカレー屋があるから、そこへ行こうか!」
「私、この辺全然分からないから、P太郎さんについていきます。」
確か、彼女はそう答えたと思う。
その2
ちょっと眠くなってきたので、後は簡略化して書きます。
彼女を連れて、東口を出て右へ曲がる。そこにタージマハールというカレー屋があった。私はキーマカレーとナン、彼女は鶏肉のカレーとご飯を注文した。料理が来た。私が頼んだナンは、予想以上にでかい。そこで彼女に「よかったら、俺のナン食べて!」と言った。彼女は「ありがとう。でも、私あんまり食べられないから。」と、遠慮がちに答えた。
食事をしながら、色々と会話が弾む。彼女の母が病気で10月に手術をすること、母の看病をするため仕事をやめるかもしれないことなど、結構重い話だ。俺は即座に、事の重大さに気が付いた。真剣な眼差しで話を聞き、彼女を受け入れている そんな自分がいた。彼女の一言一言から、彼女の心の痛みや苦しみが伝わってきて、涙が出そうになった。それと同時に、彼女の母を想う優しい気持ちを感じることができ、私の心は温かいぬくもりに包まれた。
結局、アドバイスなど一つも出来なかった。
その3
彼女の鶏肉のカレーは、鮮やかなオレンジ色をしていておいしそうだった。そのカレーをじっとみつめている私に、彼女はこうつぶやいた。
「P太郎さん、よかったら私のカレー食べて。結構おいしいよ。」
「結構、おいしいよ」という彼女の笑顔が最高にかわいかった。
「ん、いいの。じゃあ、さっそくいただきます。」私は満面の笑みで、スプーンを彼女のお皿に伸ばした。そして、口の中にゆっくりと運ぶ。ほんのりした辛みとミルクが溶け出したマイルドさが融合して、贅沢な味を醸し出している。私は思わず
「うまいね、このカレー。」
と叫んだ。
彼女はにこっと笑みを浮かべていた。
それから、私は友だちと万博に行って、44階の高級ホテルの一室に泊まり、そこからの眺めが最高だったことなどを話し始めた。いつのまにか、自慢話になっていた。彼女は「いいなぁー。私もこんなとこに泊まりたい。」とうらやましそうだったので、「今度、一緒に行こうね!」と思い切って言ってしまった。
カレー屋を出るため、会計を済ます。私は彼女の分を払ったが、後から彼女が「私、自分の分は払いますよ。当然です。」とお金を差し出したので「いいよー。」とあわてて断るが、許してくれない。結局、割り勘になってしまった。
外はもう、すっかり暗くなっていた。「これから、どうしようか?」と私がつぶやく。彼女は、夜風を気持ちよさそうに吸って「うーん、どうしようか。」と言った。
私は、そのとき「これは行けるぞ!」と思った。
「少し疲れたから休んでいこうか。」
「うん。」
「P太郎さん、どこに行くの?」
「ホテルだよ。」
私の頭の中は、すっかりラブホコース一色に染まっていた。しかし、それを実行しようとすると、彼女が一気に引いてしまう予感がしたので、我慢した。
「松並木沿いを歩こうか?」俺は、夜風を吸って気持ちよさそうにしている彼女にそう言った。すると彼女は、「松並木ってどこ?」と松並木がある通りとは正反対の方向に進もうとしたので、「こっちだよ」と誘導した。
松並木に行く途中に、インターネット漫画喫茶らしき建物があった。突然彼女がそこに入りたがるので、仕方なく入った。
中に入ったとたん
「私がイメージしていたものとは全然違う。もっとぼろい昔の漫画喫茶風かと思ったけど・・・」
と、彼女が後悔したかのように首をかしげた。
きっと、彼女はレストラン風の健全な店内をイメージしていたのであろう。
無理もない。ここの漫画喫茶は、
二人個室がメインの、疑似ラブホ風の作りになっているからだ。
私は迷わず店員さんに「個室お願いします。」と頼んだ。
個室の中は狭く、二人座れる程のソファーがやっとの思いで横たわっている感じだった。私は、彼女とイチャイチャできる絶好のチャンスだと思い、はち切れんばかりに鳴る鼓動を押さえながら部屋に入った。
彼女を奥にして、私は外(ドア寄り)に座った。
さっきから、彼女の様子がどうもおかしい。少しもじもじしている。
一体、どうしたのか?
いや、これは明らかに動揺しているかのように見えた。
「こんなはずじゃなかったのに。」
彼女の独り言が聞こえてくるかのようだった。
彼女は私のそばに寄るどころか、明らかに私との距離をおいている。私は、彼女の体にはさわれないことを悟った。
約一時間、彼女とは一定の距離を置きながら、漫画の話をしたり、高級ホテルの話をしたりして、適当に時間を潰した。彼女がのってこなかったことが、何よりも痛かった。
しかし、狭い空間で彼女と同じ空気を吸えたと思うと、なぜか嬉しくなった。
私たちは、外に出た。
まだ、10時半くらいだったので、
「これから、松並木のそばを歩かない?」
と再び誘ってみた。
でも彼女は、「明日もあるから。」と時計を見たのでここでお開きとなった。私は寂しかったので、駅まで手をつないで歩きたいと思った。少しでも、彼女のぬくもりを感じていたい。
彼女の手をさわろうかと思った。「手をつなごう。」
と言おうかと思った。
でも、言えなかった。
彼女の右手には白いバッグ、左手には傘と、手がふさがれていることも影響したのかもしれない。
私は勇気をふりしぼることができなかった。
「あぁ、あともう少しで駅に着いちゃう。」私は焦った。
そしてついに
「一緒に手をつなごう!」
と明るく言ってみた。
すぐに彼女は「はずかしいからやめて。」
と言った。そのたった一言で、私の心は一瞬にして凍りついてしまった。
か な し い
そのときの心境を一言で表すのなら、この4文字がピッタリとあてはまる。
私は悲しかったのだ。電車男の足元にも及ばない、虫けらのような自分がそこにいたからだ。
しかし、私は彼女の口元がゆるんでいるのに気が付いた。
彼女は恥ずかしそうに笑っている。
私はちょっと安心した。
私は動揺した心をかき消すかのように、こうつぶやいた。
「今度、いつ会えるかな?」
「うーん。」
彼女は考えている。私は、崖っぷちに追いやられた子鹿のように、うろたえた。
しかし、すぐに
「また、仕事終わったときに会いましょ。」
っていう返事が返ってきたので、ほっとした。
「でも、仕事ある日じゃ忙しいし時間が・・・」
私は、弱気になった。
すると
「時間は作るものですよ。」
と彼女は強気に答えた。
駅に着いた。5分も経たないうちに私が乗る下り電車と、彼女が乗る上り電車がほぼ同時にやってきた。
ドアが開き、電車に乗る彼女に俺は
「今日はどうもありがとう!また会おうね!」
と言った。
彼女は恥ずかしそうに下を向きながら、軽く手を振ったかのように見えた。
私は幾度か、後ろをふり返り彼女を見た。
彼女は決して後ろは見ず、ただ前を向いていた。
その4
福岡ドームいかがでしたか。一人で行ってるのですか?それとも、愛しのAちゃんと?
俺はというと
その4
Tさんと食事をしたのは、先週の水曜日。台風が来るちょっと前だった。確か、雨一つ降らないよい天気で、空は澄んでいたように思う。
あれから、3日が過ぎた。そう、今日は日曜日である。実はというと、3日の間、俺はKさんと連絡を取れずにいる。
先週の金曜日の晩、俺はKさんの声が聞きたくなって、電話をかけた。「トゥルルル トゥルルル・・・」呼び出し音がこだまする。7、8回鳴った後、留守番電話に変わった。
「きっとKさんは、今頃お風呂に入っているのかな?」と、俺は勝手に想像を膨らませていた。
5分後、再びKさんに電話をかけてみる。7、8回の呼び出し音のあと、また留守番電話に繋がってしまった。
俺はちょっと不安になった。
次の日の土曜日、今度は期待に胸を膨らませながら、俺はKさんに電話をかけてみる。
「Kさん、出るかな」
Kさんの明るい声を想像しながら、心が躍っている俺がいる。
しかし
また、留守番電話に繋がってしまった。
「もう一回だけ。」
俺は、最後の望みをかけて、もう一度電話をかける。
しかし、結果は同じだった。
昨日より不安な気持ちになった。
そんな気持ちをかき消したくて、今度はメールを打ってみた。
Kさんへ
「お元気ですか。電話しても留守電になっていたので、どうしたのかなと思ってメールしました。Kさんの声が聞きたくて。」
本当は、もっとかっこいい文章にしようと思った。でも、寂しくて寂しくて、そして不安で、そんな余裕などなかった。そう.....
俺はメールを打ちながら、心の中で泣いていたんだ。
「Kさんに会いたい。そして思いっきり抱きたいと。」
メールが打ち終わる。俺は、すぐに送信ボタンを押した。
俺は、Kさんからのメールをひたすら待つことにした。
今日は日曜日。まだ、メールは来ない。もう、夜中にさしかかろうとしている時間だ。一体、どうしてしまったんだろう。俺は、Kさんのことを考える。ひたすら考える。
「Kさんのお母さんの具合が悪いのだろうか。だから今、必死で看病してるのでは・・・」「いや、それとも・・・」
俺の勝手な妄想は、夜の闇にむなしく消えていく....
俺の心はしぼんだままだ。
「Kさんに嫌われてしまったのだろうか?」
俺は、考えたくもない最悪のシナリオを想像している。
「いや、そうではない。Kさんはお母さんの看病で...」
もう一人の俺が、反対からつぶやく。
「もう、どうしたらいいんだろう。本当にわからないや。このまま、待つしかないのかな。」
俺は、寂しくて悲しくて、絶望感にも襲われている。
「もう、終わりかな...」
「いや、終わりじゃないよ。近いうちに、きっと電話がかかってくるさ!」
「そうかなぁー。本当にそうかなぁ。」
「そうだとも。きっとそうだとも!」
今はただ、自分を励ますしかなかった。
「恋愛の神様よ。どうか俺を見捨てないでください。」
俺は、祈り続ける。
↓
↓
どれだけ、祈ったのだろうか?
あれから、少なくとも30分は経ったはずだ。
机の上に置いてあった携帯が、突然震え始める。
「ぶるぶる」
「ブルブル」
俺は、あわてて携帯の画面を見る。
画面には「K」と出ていて、その文字が小刻みに点滅している。
「Kさんからだ。」
俺は即座に通話ボタンを押し、携帯を左耳に当てた。
お食事会終わりました。
PM6:33
集合場所に到着。仕事が長引いて、3分遅刻してしまった。駅の階段を必死に下り、改札までダッシュ!
改札から少し離れた所に、背中を丸めて小さくたたずんでいる彼女の姿が見える。俺は、改札をくぐり抜け猛ダッシュで彼女に近づいた。「Kさん、ごめん。結構待った?」
「ううん。だいじょうぶですよ。少しその辺うろちょろしてたので。」彼女の優しくてゆったりとした口調に、俺はほっと胸をなで下ろした。上は緑色の洋服で、スカートは茶色。地味な所は相変わらずだけど、いつもと違う。何かが違う。そして、俺たちは少しずつ歩き始めた。
「これからどうしようか?ボーリングでも行く?」 以前、ボーリングは好きだと言っていた彼女の言葉を信じて、俺は今にも震え出しそうなか弱い声で言った。
「ボーリングやる力が残ってないから。」 彼女は私の予想とは裏腹に、うなだれるように答えた。きっと、今日は疲れているのだろう。無理して連れて行っても、きっと盛り上がらない・・・
俺は、がっかりした。まだ6:30だし、腹は減ってない。しかし、ここでうなだれるわけにはいかない。いきなり、食事モード全開の言葉を投げかけた。「よし、じゃあタージマハールというインドカレー屋があるから、そこへ行こうか!」
「私、この辺全然分からないから、P太郎さんについていきます。」
確か、彼女はそう答えたと思う。
その2
ちょっと眠くなってきたので、後は簡略化して書きます。
彼女を連れて、東口を出て右へ曲がる。そこにタージマハールというカレー屋があった。私はキーマカレーとナン、彼女は鶏肉のカレーとご飯を注文した。料理が来た。私が頼んだナンは、予想以上にでかい。そこで彼女に「よかったら、俺のナン食べて!」と言った。彼女は「ありがとう。でも、私あんまり食べられないから。」と、遠慮がちに答えた。
食事をしながら、色々と会話が弾む。彼女の母が病気で10月に手術をすること、母の看病をするため仕事をやめるかもしれないことなど、結構重い話だ。俺は即座に、事の重大さに気が付いた。真剣な眼差しで話を聞き、彼女を受け入れている そんな自分がいた。彼女の一言一言から、彼女の心の痛みや苦しみが伝わってきて、涙が出そうになった。それと同時に、彼女の母を想う優しい気持ちを感じることができ、私の心は温かいぬくもりに包まれた。
結局、アドバイスなど一つも出来なかった。
その3
彼女の鶏肉のカレーは、鮮やかなオレンジ色をしていておいしそうだった。そのカレーをじっとみつめている私に、彼女はこうつぶやいた。
「P太郎さん、よかったら私のカレー食べて。結構おいしいよ。」
「結構、おいしいよ」という彼女の笑顔が最高にかわいかった。
「ん、いいの。じゃあ、さっそくいただきます。」私は満面の笑みで、スプーンを彼女のお皿に伸ばした。そして、口の中にゆっくりと運ぶ。ほんのりした辛みとミルクが溶け出したマイルドさが融合して、贅沢な味を醸し出している。私は思わず
「うまいね、このカレー。」
と叫んだ。
彼女はにこっと笑みを浮かべていた。
それから、私は友だちと万博に行って、44階の高級ホテルの一室に泊まり、そこからの眺めが最高だったことなどを話し始めた。いつのまにか、自慢話になっていた。彼女は「いいなぁー。私もこんなとこに泊まりたい。」とうらやましそうだったので、「今度、一緒に行こうね!」と思い切って言ってしまった。
カレー屋を出るため、会計を済ます。私は彼女の分を払ったが、後から彼女が「私、自分の分は払いますよ。当然です。」とお金を差し出したので「いいよー。」とあわてて断るが、許してくれない。結局、割り勘になってしまった。
外はもう、すっかり暗くなっていた。「これから、どうしようか?」と私がつぶやく。彼女は、夜風を気持ちよさそうに吸って「うーん、どうしようか。」と言った。
私は、そのとき「これは行けるぞ!」と思った。
「少し疲れたから休んでいこうか。」
「うん。」
「P太郎さん、どこに行くの?」
「ホテルだよ。」
私の頭の中は、すっかりラブホコース一色に染まっていた。しかし、それを実行しようとすると、彼女が一気に引いてしまう予感がしたので、我慢した。
「松並木沿いを歩こうか?」俺は、夜風を吸って気持ちよさそうにしている彼女にそう言った。すると彼女は、「松並木ってどこ?」と松並木がある通りとは正反対の方向に進もうとしたので、「こっちだよ」と誘導した。
松並木に行く途中に、インターネット漫画喫茶らしき建物があった。突然彼女がそこに入りたがるので、仕方なく入った。
中に入ったとたん
「私がイメージしていたものとは全然違う。もっとぼろい昔の漫画喫茶風かと思ったけど・・・」
と、彼女が後悔したかのように首をかしげた。
きっと、彼女はレストラン風の健全な店内をイメージしていたのであろう。
無理もない。ここの漫画喫茶は、
二人個室がメインの、疑似ラブホ風の作りになっているからだ。
私は迷わず店員さんに「個室お願いします。」と頼んだ。
個室の中は狭く、二人座れる程のソファーがやっとの思いで横たわっている感じだった。私は、彼女とイチャイチャできる絶好のチャンスだと思い、はち切れんばかりに鳴る鼓動を押さえながら部屋に入った。
彼女を奥にして、私は外(ドア寄り)に座った。
さっきから、彼女の様子がどうもおかしい。少しもじもじしている。
一体、どうしたのか?
いや、これは明らかに動揺しているかのように見えた。
「こんなはずじゃなかったのに。」
彼女の独り言が聞こえてくるかのようだった。
彼女は私のそばに寄るどころか、明らかに私との距離をおいている。私は、彼女の体にはさわれないことを悟った。
約一時間、彼女とは一定の距離を置きながら、漫画の話をしたり、高級ホテルの話をしたりして、適当に時間を潰した。彼女がのってこなかったことが、何よりも痛かった。
しかし、狭い空間で彼女と同じ空気を吸えたと思うと、なぜか嬉しくなった。
私たちは、外に出た。
まだ、10時半くらいだったので、
「これから、松並木のそばを歩かない?」
と再び誘ってみた。
でも彼女は、「明日もあるから。」と時計を見たのでここでお開きとなった。私は寂しかったので、駅まで手をつないで歩きたいと思った。少しでも、彼女のぬくもりを感じていたい。
彼女の手をさわろうかと思った。「手をつなごう。」
と言おうかと思った。
でも、言えなかった。
彼女の右手には白いバッグ、左手には傘と、手がふさがれていることも影響したのかもしれない。
私は勇気をふりしぼることができなかった。
「あぁ、あともう少しで駅に着いちゃう。」私は焦った。
そしてついに
「一緒に手をつなごう!」
と明るく言ってみた。
すぐに彼女は「はずかしいからやめて。」
と言った。そのたった一言で、私の心は一瞬にして凍りついてしまった。
か な し い
そのときの心境を一言で表すのなら、この4文字がピッタリとあてはまる。
私は悲しかったのだ。電車男の足元にも及ばない、虫けらのような自分がそこにいたからだ。
しかし、私は彼女の口元がゆるんでいるのに気が付いた。
彼女は恥ずかしそうに笑っている。
私はちょっと安心した。
私は動揺した心をかき消すかのように、こうつぶやいた。
「今度、いつ会えるかな?」
「うーん。」
彼女は考えている。私は、崖っぷちに追いやられた子鹿のように、うろたえた。
しかし、すぐに
「また、仕事終わったときに会いましょ。」
っていう返事が返ってきたので、ほっとした。
「でも、仕事ある日じゃ忙しいし時間が・・・」
私は、弱気になった。
すると
「時間は作るものですよ。」
と彼女は強気に答えた。
駅に着いた。5分も経たないうちに私が乗る下り電車と、彼女が乗る上り電車がほぼ同時にやってきた。
ドアが開き、電車に乗る彼女に俺は
「今日はどうもありがとう!また会おうね!」
と言った。
彼女は恥ずかしそうに下を向きながら、軽く手を振ったかのように見えた。
私は幾度か、後ろをふり返り彼女を見た。
彼女は決して後ろは見ず、ただ前を向いていた。
その4
福岡ドームいかがでしたか。一人で行ってるのですか?それとも、愛しのAちゃんと?
俺はというと
その4
Tさんと食事をしたのは、先週の水曜日。台風が来るちょっと前だった。確か、雨一つ降らないよい天気で、空は澄んでいたように思う。
あれから、3日が過ぎた。そう、今日は日曜日である。実はというと、3日の間、俺はKさんと連絡を取れずにいる。
先週の金曜日の晩、俺はKさんの声が聞きたくなって、電話をかけた。「トゥルルル トゥルルル・・・」呼び出し音がこだまする。7、8回鳴った後、留守番電話に変わった。
「きっとKさんは、今頃お風呂に入っているのかな?」と、俺は勝手に想像を膨らませていた。
5分後、再びKさんに電話をかけてみる。7、8回の呼び出し音のあと、また留守番電話に繋がってしまった。
俺はちょっと不安になった。
次の日の土曜日、今度は期待に胸を膨らませながら、俺はKさんに電話をかけてみる。
「Kさん、出るかな」
Kさんの明るい声を想像しながら、心が躍っている俺がいる。
しかし
また、留守番電話に繋がってしまった。
「もう一回だけ。」
俺は、最後の望みをかけて、もう一度電話をかける。
しかし、結果は同じだった。
昨日より不安な気持ちになった。
そんな気持ちをかき消したくて、今度はメールを打ってみた。
Kさんへ
「お元気ですか。電話しても留守電になっていたので、どうしたのかなと思ってメールしました。Kさんの声が聞きたくて。」
本当は、もっとかっこいい文章にしようと思った。でも、寂しくて寂しくて、そして不安で、そんな余裕などなかった。そう.....
俺はメールを打ちながら、心の中で泣いていたんだ。
「Kさんに会いたい。そして思いっきり抱きたいと。」
メールが打ち終わる。俺は、すぐに送信ボタンを押した。
俺は、Kさんからのメールをひたすら待つことにした。
今日は日曜日。まだ、メールは来ない。もう、夜中にさしかかろうとしている時間だ。一体、どうしてしまったんだろう。俺は、Kさんのことを考える。ひたすら考える。
「Kさんのお母さんの具合が悪いのだろうか。だから今、必死で看病してるのでは・・・」「いや、それとも・・・」
俺の勝手な妄想は、夜の闇にむなしく消えていく....
俺の心はしぼんだままだ。
「Kさんに嫌われてしまったのだろうか?」
俺は、考えたくもない最悪のシナリオを想像している。
「いや、そうではない。Kさんはお母さんの看病で...」
もう一人の俺が、反対からつぶやく。
「もう、どうしたらいいんだろう。本当にわからないや。このまま、待つしかないのかな。」
俺は、寂しくて悲しくて、絶望感にも襲われている。
「もう、終わりかな...」
「いや、終わりじゃないよ。近いうちに、きっと電話がかかってくるさ!」
「そうかなぁー。本当にそうかなぁ。」
「そうだとも。きっとそうだとも!」
今はただ、自分を励ますしかなかった。
「恋愛の神様よ。どうか俺を見捨てないでください。」
俺は、祈り続ける。
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どれだけ、祈ったのだろうか?
あれから、少なくとも30分は経ったはずだ。
机の上に置いてあった携帯が、突然震え始める。
「ぶるぶる」
「ブルブル」
俺は、あわてて携帯の画面を見る。
画面には「K」と出ていて、その文字が小刻みに点滅している。
「Kさんからだ。」
俺は即座に通話ボタンを押し、携帯を左耳に当てた。
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